受けた恩を忘れず、その人に返す「恩返し」は意識してされている方も多いでしょう。
しかし返したくても返せない場合どうすればいいのでしょうか?
もうその人が天に還ってしまっていたり、名も知らない一期一会の人であれば、直接その人にお礼をいうこともできません。
長く生きていると、その時気づかなかった恩に後になって気づくことも多くなってきました。
親や祖父母、学校の先生など、今思うと良くそこまでのことをと思うことがたくさんあります。
また出会った人の、特に意識していないような何気ない一言や自然な態度に、心安らぎ勇気づけられたこともあります。
若い時、困っていて通りすがりの人に助けられたことも一度や二度ではありません。
それらのことを思い出すと感謝の気持ちが湧いてきますが、その一方でろくにお礼もできなかったと何か心残りに感じることもありました。
「恩知らず」にはなりたくありませんが、結果的に返せなかった恩の方がはるかに多いのだろうと思います。
そんな時知ったのが「恩送り」です。
それは、恩を受けた人に直接返すのではなく、その人とは別の人を手助けすることで、その時の恩を返していくというものです。
それを知った時は、あの人に恩返しはできないけれど、その恩は別の形で返すことができる、きっと今は会えないあの人も受け取ってくれると思うと本当に嬉しくなりました。
それ以来「恩送り」を意識しています。
これは正の連鎖を生むという点でも素晴らしいことだと思います。
多くの人が実行することによって、きっと社会も少しずつ良くなっていくでしょう。
こちらから誰かに対して何かをしてあげるということもあるでしょう。
しかしどうしても見返りを求めてしまうのが人の常です。
その人に感謝されたり、社会的評価が上がることを期待してしまうと、そうならなかった時に不満に思うものです。
またそのような心は相手から恩着せがましいと思われてしまうかもしれません。
しかし「恩送り」だと思えば、すでに自分が受けた恩を返しているのですから、その時相手から良い反応がなくても不満に思うことはありません。
何よりスマートでカッコいいですよね。
人間は古来から「恩送り」をしてきたのでしょう。
だからこそ今の私たちの生活があるのだと思うと、会ったこともない昔の人にも手を合わせたくなります。
今では「恩送り」は「恩返し」と比べると一般的な言葉ではありませんが、江戸時代の文献にも「恩送り」の記述があるそうです。
令和の時代に誰もが知る言葉になるといいですね。
恩とは、誰かから受けた恵み、手助け、親切、愛などですが、このようなことに私たちは生かされているのですよね。
生まれたことも、生きていることも、ひとつの奇跡、感謝したいと思います。
「恩送り」をしてステキな世界にしていきましょうね。