怒りを感じたときに相手も自分も責めずに鎮め、冷静に行動する方法!

怒りを感じたときに相手も自分も責めずに鎮め、冷静に行動する方法!
阿形像



人は誰でも怒りを感じる時があるものです。
それは普通のことですが、いつまでもその感情を引きずってしまうと社会生活に支障をきたし人間関係が崩れてしまうこともありますし、自分の健康にもよくありません。

仕事関係や家族、近所の人や友人の言葉や行動に怒りを感じたり、社会問題やネットで見た誰かの不愉快な行動を許せなく思えるかもしれません。
日常生活で怒りがなくなればいいのですが、身を護るための本能の感情なので怒りを感じなくすることはできません。

対処方法としては怒りへの耐性を高めていくことが重要です。
自己受容度と他者寛容度は比例すると言われていますので、自分を受け入れ認めてあげることも必要です。

人に傷つけられたと感じたり、思い通りにならない人にイライラしたりすることは誰にでもあります。
また誰かが間違っていると糾弾したくなることもあるでしょう。

昨今では不寛容な世の中の風潮もあり、モンスター○○と言われるような度を超えた怒りの表現をする人も目立つようになってきました。
それらは客室乗務員やコールセンターのオペレーターなど、感情労働と言われる仕事をする人の健康にも影響を与えていることが知られています。
学校の先生なども長期の休職を余儀なくされる人もいます。

怒りにまかせて当たり散らしたり怒鳴ったり、怒鳴らなくても心理的に脅したりする人は、その相手にも被害を与えますが、結局そのエネルギーは気づかない内に自分をも蝕んでいます。
あおり運転なども問題視されていますが、怒りによる行動が命を奪ったり、人生を変えてしまうこともあります。

この世に自分とまったく同じ考えの人はいません。
似た考えの人はいるでしょうし、それが多数派なら安心もできるのでしょうが、それでも微妙な差はあるものです。
人間は「あなたは間違っている、私が正しい」と皆が無意識に思ってしまう生き物です。
極端な正義感は理性で修正してコントロールすることが不幸にならない方法です。

誰かに怒りを感じた時は、その相手に激しく怒りをぶつけるのではなく、まず落ち着くことが必要です。
感情的になっていると論理的な判断ができませんので、冷静さを取り戻してから重要な決定をするなど、先延ばしも悪いことではありません。
ただ先延ばしにしている間に、相手がこちらの対応に怒りを感じて関係が切れてしまう苦い経験も私にはあります。
それも受け入れられるかも含め、その時の自分にできることをするしかありません。
 

瞬間的な怒りの感情を鎮めるには、深呼吸をしたり、水を飲む、散歩や瞑想、祈りも効果があります。
とりあえずその場を離れるだけでも少し落ち着きます。

心が怒りでいっぱいになると自分だけが被害者のような気分になりますが、相手に悪気のない場合も多くあります。
相手を責める前に、自分は何をどうしてほしかったのか、何を望んでいたのかを考えて、まずは自分に寄り添ってあげましょう。

犯罪のような理不尽な目にあって怒りを感じる時も、怒りに身を任せるのではなく、自分を労ることに集中することが大切です。
仕事先で嫌な思いをしたり、セクハラやパワハラなどを受ける人もいるでしょう。
レストラン経営者が予約を無断キャンセルされ途方に暮れているニュースなどを見ても、その人は怒りを感じないはずはありません。
不愉快であったり大変であったりすると思いますが、まずは相手を憎んだり許したりするのではなく、自分に優しくすることを第一に考えてください。
怒りを感じるのは当たり前なので、そのような自分を責めないことは言うまでもありません。

日常の中の怒り、近しい人への怒りは、一旦収まっても常に原因が作り出されることがあるので困りますね。
本当は怒りの原因は自分の中にあるのでトリガーのようなものなのですが、自分を知る機会と捉え落ち着こうとしても、なかなかそうはさせないポイントをついてきます。
修業の場とも感じますが、できるだけ穏やかに学びたいものです。

1970年代にアメリカで始まった怒りをコントロールする技術「アンガーマネージメント」というものがあります。
技術だと考えると時間をかけてでも習得すればいいので、性格や心の問題だと言われるより気が楽ですね。

「アンガーマネージメント」のひとつめは衝動のコントロールです。

イラッとした瞬間から6秒程度は怒りのピークにあるため、その間は相手に対して強い反応しないことが大切です。
頭の中を真っ白にしてゆっくり6つ数を数えたり、手を開いたり閉じたりする「6秒グーパー」という方法もあります。

口角を上げ形だけでも笑顔を作ると寛容な気分になります。
「大丈夫」「ネタにしよう」などと心で唱えてもいいでしょう。

次に思考のコントロールがあります。

人は自分なりの信条を持っていて、それに反することには怒りを感じます。
許せないこと、許容範囲、許せることの3つの境界線を意識し、許容範囲を広げることで無駄に怒らなくなります。
「こうしてほしい」「最低限これは守って」などを伝えておくといいでしょう。

どう表現するかという行動のコントロールもあります。

アンガーマネージメントでは怒ることは「リクエスト」と捉えています。
上手に怒ってリクエストすることで状況を好転させることができる場合もあります。

気分やその時の状況で怒るポイントを変えずに伝えることで、機嫌が悪いだけと思われることなく、どうすればいいか相手を一緒に考えるきっかけになります。
相手を責めずに自分が困っていることとして伝えましょう。

食生活も怒りに影響を与えています。
キレる子供たちは昔からいて私も10代の頃けっこうキレていましたが、最近ではキレやすい老人たちも増えているようです。
複合的な要因があるでしょうが、ホルモンバランスの影響もありますので、食生活の改善で性格も変わってくることがあります。

ご飯に少し麦を入れて食べると情緒が安定します。
血糖値の急激な変動もイライラが増すのでコントロールしましょう。
青魚などに含まれるEPAとDHAは攻撃的な感情を抑えイライラを減らします。サプリなどもあるので上手に摂取しましょう。

甘い物やジャンクフードの食べ過ぎも良くないとされています。
トランス脂肪酸の蓄積が脳内の神経伝達物質にダメージを与えるという研究もあります。

食生活を原因とする怒りは、健康のためにもできるだけ減らすよう努力しましょう。

以前はカルシウムが不足すると怒りやすくなるので牛乳を飲むといいと言われていました。
1975年の雑誌記事から広まったようですが、血液中のカルシウムが不足すると骨に蓄えられているカルシウムが不足分を補うので、現在は食事のカルシウム不足と怒りの関係は否定的な見解が多くなっています。
ただカルシウムを貯蔵している骨にカルシウムは必要ですので間接的には役立つとも言えるでしょう。
研究が進むと修正もありますので、ひとつの方法に縛られないことも必要ですね。

自分の五感を喜ばせてあげると怒りが静まってきます。
中でも心地の良い触感は心を穏やかにします。

TVで見ましたが、肌触りの良いパジャマで寝るのも良いそうです。
ぬいぐるみを抱いて寝るのも良さそうですが、大人の男性がすると人に知られたくない秘密を抱えることにもなるので、それは女性や子供の特権かもしれないですね。

また自分が何に対して怒ったのかを書き留め、自分のパターンを知ることでキレるほどの感情表現は抑えられるようになるとのことです。
冷静に客観的に自分を知ることは何に対しても役に立ちますね。

怒りは様々な要因で起こりますが、よい方向に転換できる可能性のあるものもあります。
社会とのかかわりで発生した怒りが不正を排し弱者を救うことに繋がる場合などです。
事なかれ主義、長いものに巻かれろで、悪影響があることがわかっていたり困っている人がいても見て見ぬふりをしていてはいけませんよね。
怒らなけれはいけない時は人生には必ずあり、その時は感情的にならず適切に効果的に行動しましょう。

お寺の仁王門の阿吽の仁王像は口を開いた阿形像が顕にした怒りを、閉じた吽形像が秘めた怒りを表しています。
どちらもお寺を守る守護神として重要な役割を果たしています。
如来や菩薩の知恵や優しさと共に、仁王の強さも必要なのですね。

思いやりの心が根底にある怒りは環境を変え問題を解決したり新しいものを生み出す力にもなります。
ただ感情的に切れたり誰かを責めるのではなく、カッコ良くポジティブに怒りのパワーを使いましょう。

怒りは誰しも経験する感情のひとつです。

チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の著書にこのように書かれています。

『おそらく、怒りには二種類あると思います。
ひとつは、よい感情にもなりうる怒りです。
たとえば、相手のことを心から心配して、誠実な思いやりから、「悪い行いをやめなさい」と忠告したのに、相手が耳を貸さない場合です。
そんなときは、ある種、力ずくで相手の悪い行いをやめさせる以外に方法がありません。』

『密教の修行には、怒りのエネルギーを別のものに変換する瞑想テクニックがあります。忿怒尊(忿怒の姿をした仏)の意味もここにあります。
思いやりの動機が根底にあれば、ときには怒りが役に立つこともあるでしょう。怒りのせいで普段以上のエネルギーが出たり、ものごとをすばやくおこなえることもあるからです。
しかし、たいていの場合、怒りは憎悪につながります。憎悪はどんな場合でもネガティブです。憎悪は邪悪な思いを宿すからです。』

『怒りが生じそうになったときに心の平和を保つための、とても大事なテクニックがあります。
それは、不満に思ったり落胆したりしないことです。というのも、不満や落胆は怒りや憎悪の原因になるからです。
原因があれば自然と結果につながっていきます。ひとたび原因と条件がすべて揃ってしまえば、その結果が生じないように食い止めるのは至難の技です。
ですから、状況をよく観察し、怒りの原因となるプロセスが見つかったときには、初期の段階で摘み取ってしまいましょう。
それはとても大事なことです。そうすれば、そこから先にはすすみません。
「人菩薩行論」という書物の中で、「不満は怒りの糧になります。だから、不満につながるような状況に身をおいてはいけません」と聖者シャーンティデーヴァはおっしゃっています。
これは自分の財産、仲間や友人、その他あらゆる状況に対して、ある種の心構えをもって臨むべきだということです。』

『あなたが知っている人で、なおかつ、あなたに厄介ごとをもたらす人だけが、忍耐と寛容の実践のとてもよい機会を与えてくれるのです。』

『ここで問題になるのは、いつも謙虚にしているとそれにつけ込む人が出てくるかもしれないし、もしそうなったらどう対処すればいいのか、ということです。
しかし、答えはとても簡単です。知恵と常識をつかって、怒りと憎悪をもたずに行動すればよいのです。状況から判断して、あなたの側から何か反撃する必要があるなら、そうしてかまいません。しかし怒りを抱かずに反撃して下さい。
実際のところ、怒りではなく、心の知恵にもとづいてアクションをおこしたほうが大きな効果があるものです。
怒りの真っ只中でとった行動というのは、たいていうまく行かないものです。怒りや憎悪を抱かずにやったほうがずっと効果的にやり遂げることができます。』

『いつも心穏やかでいるべきです。心配事があっても、その問題は今生だけで終わるのですから、いつも穏やかな心で過ごしましょう。
水から波が現れ、また水に戻るように、悩みごとはほんの一時、心を悩ませるに過ぎません。そんなものに心の平安を乱されてはいけません。心が穏やかであれば血圧なども平常に保たれます。結果として健康にもよいでしょう。』
(引用:ダライ・ラマ ハートフル・メッセージ 春秋社)

できるなら怒りは少なく穏やかな時が多いほうが自分の健康にもいいので、問題を解決するために怒りが必要ないほどの心と行動力を養って、より良い人生にしていきましょうね。

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